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部屋は夜闇に迫られ、ちいさな彼の部屋は一層ちいさくみえた。眠るときに苦痛に身体を捩るせいで、シーツは汗ばみ乱れていた。彼はベッドから身を引き起こすと、窓辺のほうへ歩み寄った。壁のように黒々としたガラスに自分の姿を映すと、ふいに立ち眩みがして、手で頭を覆い、頬に触れて形を確かめる。まるで八方を黒い壁で覆われているようだ。彼はなぜ自分がこんなにも苦しむのか理解できなかった。ただみなとおなじように、空気を呼吸し(これはとても清らかなイメージ)、暖かい暖炉をとり、自由に動き回りたいとしか望まなかったのに。いまはすべてが、反対の方向へと彼を差し向けていた。何年もこうした毒に身体中を犯されていたかれは酷く疲れきっていた。ほんとうはただ窓をあけさえすればよかった、そのとき窓は彼を映さず、また夜の黒さを押し付けることもなく、清らかな外の空気を彼に送ってくれるのだった。夜は果てしなかった。彼はこの清らかな空気に着いていきたかった。もう窓は夜は壁は黒さは、彼を閉じ込め苦悩させるものではなく、彼を自由にするためのものになっていた。朝に家族が彼の死を見いだす。